vinification

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地下セラー

醸造の仕事による酒は、彫刻や絵画のようにつくりあげる芸術でもなければ一日に決まった数を製作する工芸でもない。ラインで作る工業製品でもなく、ただの農産物でもない。酒とは人に有用な微生物が酸素のない状態で生きていく際に生じた生成物(アルコール、香り成分など)を利用している産物である。よって醸造の仕事は微生物の環境を整える事である。なかでも糖化や蒸留といった工程の無い、果汁をただ醗酵させる最もシンプルな酒の製造方法であるワインはそれゆえ原料のポテンシャルが製品に反映されやすい。また原料の保存ができないため産地で仕込む必要がある。よってワインは最も原料の背景、風土、生育時の気候を表すお酒と言える。

コウバ
樽にワインを注いでいる写真
コウバ
樽にワインを注いでいる写真

自分が考えるよいワインとは、

・健全であるワイン
・バランスのよいワイン
・品種が感じられるワイン
・……………………
・…………………
・…………etc.

そして自分たちが作りたいのは食卓に寄り添うワインである。ワインだけが目立ってはいけない。旭洋酒のワインと共に一緒に味わう料理、一緒に飲む相手との会話や聴く音楽などが引き立ってくればいいと願う。

2002年の旭洋酒初仕込み以来、一貫して醸造面で気をつけている事と言えばこの原料であるブドウ、そして醗酵中の醪、醗酵の終わったワインとどう向き合うかに尽きる。簡潔にいうと、

・ブドウの腐敗果、病果を出来るだけ取り除く。→亜硫酸使用量の低減、品種の表現
・収穫翌日に仕込む。→健全な醗酵
・可能なかぎりブドウの熟度にこだわる。→香味の複雑さ、品種の表現
・過剰な抽出は控える。→バランスのよいワイン、日本の食卓との調和
・醗酵の終わったワインを可能な限り品質的なロスなく瓶詰まで。
 →酸化、劣化を防ぎ亜硫酸の使用量を低減

決して声高に主張できることではないが20年弱、至極当然のこととしてやり続けたことである。

機械でちぎれた梗は手で取り除く
機械でちぎれた梗は手で取り除く
甲州種のホールバンチプレス
甲州種のホールバンチプレス
手詰め機「レイメイ」でのボトリング
手詰め機「レイメイ」でのボトリング

先日瓶詰め後15年以上経過したそれいゆピノ・ノワール2004を飲んでみた。予想に反して当時の印象と変わらず色濃く強くなんかアマローネの様であり一人の飲み手として飲めばすごく美味しいワインであった。

なぜだろう?
・2004年猛暑で若木のため収量少な目だったからか?
・ブドウがレーズン状だったせいか?
・醸し温度が高かったからか?
・セニエしたせいか?

結局のところ2004ピノ・ノワールにとってその年の醸造方法は良かったか悪かったは分からない。飲む時期、飲む場所の環境、空気感、グラスや合わせる料理そして飲む人の嗜好などワインの評価は常に変わるものであるからワイン醸造に正解などないのかもしれない。毎年毎年やるべきことをやるべき時期に行いその場その場で考えるしかないのである。

醸造場で出会った仲間たちその①
醸造場で出会った仲間たちその①
醸造場で出会った仲間たちその②
醸造場で出会った仲間たちその②
醸造場で出会った仲間たちその➂
醸造場で出会った仲間たちその➂

新しい試み
ワイン醸造に限らず物事を続けるにはエネルギーがいる。よって白ワインを嫌気的に醗酵できピュアな果実味を引き出せる樽型ステンレス容器の利用やコルク臭の発生しないDIAMコルクの使用、マロラクティック発酵の自然誘起など少しずつではあるが新しい事にも取り組んでいる。

様々な発酵容器
様々な発酵容器