viticulture

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ブドウ畑のヒナ

栽培品種と形態

約70aの自社畑では一文字短梢式と変形垣根式でメルロー、ピノ・ノワール、シラー、アルバリーニョ等を栽培、2021年、22年と新たな品種の植え付けも計画しています。その他は11軒の農家から甲州、マスカットベイリーA、甲斐ノワール、ソーヴィニョン・ブランを購入、原料ブドウの割合としては自社畑赤品種が23%、甲州が50%、マスカットベイリーAは21%、甲斐ノワールとソーヴィニョンブランが6%です(2020年)。

欧州系ワイン専用種は甲州やベイリーAよりも房が小さく、適切な収量制限をすると反当りの収入が極端に低くなってしまいます。このため、基本的には農家さんには、この地で長く栽培されている甲州とベイリーAをお任せし、自社畑ではワイン用欧州種赤に力を注いでいます。農家さんの畑は人によって清耕栽培か草生栽培か、長梢剪定か短梢剪定か等の違いがありますが、適正な収量制限と腐敗果の除去の徹底、農薬の適正使用と記録提出をお願いしています。以前は旧旭洋酒からの年配農家が大半を占めていましたが、ここ10年でIターンやUターンの新規就農者が増えおおいに若返りました。経験は少なくてもワインへの関心と理解があり、今では旭洋酒に欠かせないチームメンバーとなっています。

一文字短梢のシラー
一文字短梢のシラー
変形垣根のメルロー
変形垣根のメルロー
小川さんの千野畑甲州
小川さんの千野畑甲州

自社畑の土づくりと病害虫管理

草の力で土を耕す目的で全園でライ麦草生栽培を行い、除草剤は使用しません。草刈りは夏季は月に1回ほど行いますが、益虫の居場所を確保すること、また、空気中の窒素を取り込むマメ科の草は時期を見計らって刈るなどの事を心がけています。草に栄養を与え、有用微生物を増やす目的で、複数の有機資材を発酵させたモグラ堆肥を秋に薄く撒いています。以前は貝殻石灰を撒いていましたが、pHが高くなりすぎたので近年は石灰資材は用いていません。2~3年に一度、土壌の詳細な分析を業者に依頼しています。また、剪定枝はむやみに焼却せず、時間が許す限り、刻んで畑に返すようにしています。

農薬は、生育期前半は化学合成殺菌剤を3~4回用います。後半はボルドー液を2~3回用います。殺虫剤は生育期は0~2回用います。私たちは無農薬はもとより、有機栽培やビオディナミなど、いわゆる自然農法のどれかを採用するものではありません。高温多湿の山梨でそのような手法をとれば、量だけでなく質(ブドウの熟度)も損なわれる可能性が大きいからです。化学合成剤は人体や他の生物への影響に未知の部分がある事と耐性菌ができやすい事がデメリットですが、ボルドー液のみでの防除体系の継続には、樹の生育のみならず生態系に影響をもたらす土壌への銅の蓄積という問題があります。このような事から私たちは、樹冠管理や早めの笠かけ(全ての房に雨除け笠をかけています)、手による害虫駆除、休眠期の粗皮剥ぎなどの耕種的防除に努め、農薬の使用回数を慣行農業の2/3~半分に減らしています。

自社畑の土づくりと病害虫管理(ハチ)
自社畑の土づくりと病害虫管理(カエル)
自社畑の土づくりと病害虫管理(テントウムシ)

品種ごとの管理

温暖化が進む昨今、昼夜の温度差の減少や長雨や大雨により欧州種ブドウの着色や糖度に相当な影響が出ています。15年前は山梨には最も適していると考えられてきたメルローも2017年辺りからあからさまな変化が見られ、もと田んぼだった平地の畑での栽培を断念しました。2008年には一番標高の高い畑にシラーを植え、品種特性を感じられるワインが出来ていますが、玉割れしやすいなど栽培は容易ではありません。シラーは花カスが落ちにくく病気や裂果の原因になるため、花カス落としを励行しています。天候とタイミングで手で一振りで取れる年もあれば、コンプレッサーを用いた方がいい年もあります。2002年の開始当初から小川氏によって植えられていたピノ・ノワールは、もともと峡東地方での栽培は難しい品種でしたが、一文字短梢栽培の先進者である小川氏※のチャレンジならと協働で作業し、2010年からは自社畑となりました。粒が密着していて潰れるため、部分的に摘蕾や摘粒をいくつかの方法で行っています。また、房が高温になり酸が早く落ちる事を防ぐため、通気性と熱の遮断に優れたタイベックス笠紙の特注サイズを使用しています。着色よりも品種独特の香ややわらかな果実味を大切にしています。

※『草生栽培で生かすブドウの新短梢栽培』
小川孝郎著 農文協刊

シラーの花カス落とし
シラーの花カス落とし
ピノ・ノワールのタイベックス笠
ピノ・ノワールのタイベックス笠
千野畑からの眺め
千野畑からの眺め

熟度の見極めと収穫

自社畑の収穫は8月下旬のピノ・ノワールに始まり、10月中旬の甲州まで約2か月続きます。最盛期の9月には仕込み作業も立て込み、秋雨前線も活発になるのでこの時期は天気予報とにらめっこで、頭の中は収穫をいつにするか、だけです。近年は当日降られる事も多く、前もっての選別や手入れが重要になってきます。8月上旬からサンプリングを始め、果汁の糖度、酸度、Phを測定し、畑では赤ワイン用ブドウの着色度合いを、樹または房ごとに調査しランクづけを行います。幹や笠紙にマークを付け、最もよい部分は単一品種仕込みへ、B級C級は他品種とのブレンドやロゼに回します。

温暖化による着色不良が顕著な昨今は特にこの仕訳は重要だと考えています。こうする事によって、全てが一緒くたになった場合よりもキャラの立ったワインが出来るからです。様々な条件が重なり適熟した部分はその年なりの品種特性を表すように、そうでないものは組み合わせや仕込み方法によって美味しさを追求します。目の前のブドウを知覚総動員で捉え、スタッフや醸造担当と話しながら最善の道を探る。年に一度の収穫で、生きている間に出来るだけ美味しいワインを作りたいからです。こうして、一年を通して、どうしたら美味しくなるかを模索しています。自社畑欧州種の収穫はベリーAや甲州より早いため、収穫作業は若手農家らのアルバイトが中心です。長年参加してもらっているので、病果や未熟果を見分ける目も肥えていて安心して任せられます。

メルローの熟度マーキング
メルローの熟度マーキング
アルバリーニョは標高の高いソーヴィニョン・ブランと混醸
アルバリーニョは標高の高い
ソーヴィニョン・ブランと混醸
メルローの熟度マーキング
メルローの熟度マーキング
アルバリーニョは標高の高いソーヴィニョン・ブランと混醸
アルバリーニョは標高の高い
ソーヴィニョン・ブランと混醸
病果を落としながら短時間で収穫
病果・未熟果を落としながらの収穫